お客様のメリット
- 地下に圧入した後のCO2挙動を世界最先端の数値解析技術により予測します。
- CO2圧入に伴って生じる安全性や周辺環境影響を定量的に評価できます。
- 地下深部の高温・高圧下でのCO2挙動を室内実験により詳細に調べることができます。
技術の特徴
二酸化炭素の回収・地中貯留技術は、二酸化炭素の大気放出抑制対策として注目されています。これはCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と呼ばれ、発電所、製鉄所、セメント工場から排出される二酸化炭素を分離・回収し、パイプラインや船舶で貯留地点まで輸送し、地中の油層、帯水層に封じ込める総合技術です。サイト選定段階から操業許可、操業中、サイト閉鎖・監視に至る各段階において、CCSの経済性や安全性を確保するために必要な重要な技術です。例えば、地中のCO2の挙動を把握するには、地震波探査などのモニタリング技術が重要です。貯留層の性能(貯留可能量や圧入性)、シール性能、サイト閉鎖後の長期的な貯留安定性などを予測するには数値シミュレーションが必要になります。
幅広いリスク要因の予測・評価が可能な数値解析技術
地球シミュレータなどの超並列スーパーコンピュータを使い、1,000万~1億節点クラスの大規模なモデルを高速で数値解析する技術を開発しました。本技術の性能や発展性は国内外から関心を集め、米国や豪州など海外のccsプロジェクトに適用しています。超臨界CO2の地中挙動だけでなく、地盤応力・変形や化学反応との連成解析により、CO2を封じ込める低浸透層(キャップロック)の健全性や地表面の隆起など、幅広いリスク要因に対応した評価が可能です。
地下貯留層の高温・高圧条件下での超臨界CO2挙動実験
地下深部を模擬した高温・高圧条件下(において岩石コア試料に超臨界状態のCO2を圧入し、CO2飽和度と弾性波速度の関係など、モニタリングに必要な岩石物性変化を測定でき、シミュレーションに用いる浸透特性パラメータも取得できる室内試験装置を開発しました。
海外プロジェクトへの積極的な参画によるノウハウの蓄積
米国、フランス、豪州などとの国際共同研究を多数実施し、数値モデリングや実験技術の適用と改良を進めています。また、国際的な枠組みであるGCCSIにもゼネコンで唯一の創設メンバーとして参画し、CCS実証試験の促進に貢献しています。
-
超並列スーパーコンピュータ 地球シミュレータ
(独)海洋研究開発機構 ホームページより -
超臨界CO2室内実験装置
実績・事例
大規模なCO2貯留による広域的な地下水影響の検討
CCSプロジェクトでは、CO2貯留層の性能(圧入可能量や速度など)、漏洩を防ぐシール層の健全性などに加えて、安全性や周辺環境影響に関わる問題についても十分な配慮が重要になります。ここで広域地下水流動系への影響を予察的に解析した事例を紹介します。東京湾を含む関東平野南部地域を対象とし、東京湾内に設けた10本の仮想圧入井から年間1000万tのCO2を100年間圧入するシミュレーションを行ないました(図-1)。解析の結果、地質条件によって浅部での被圧帯水層の地下水圧が上昇するなど、広域的な地下水圧上昇を完全には無視できない場合もあることが分かりました。
海外の実証試験への適用
これまで、米国、フランス、豪州など、海外のCCS実証試験への適用を通じて技術の実用性を確認しています。そのうち、米国WESTCARB炭素隔離地域パートナーシップ:WESTCARBは、2003年秋設立された、カリフォルニア州を含む8州が参加する炭素隔離地域パートナーシップの一つであり、90を超える産官学の機関が参加しています。大成建設は2007年からWESTCARBに参画し、実証試験の予測や評価などにおいて本技術で貢献しています(図-2)。
-
図-1 大規模CO2貯留での広域的な地下水影響予測
-
図-2 実証試験でのCO2地中挙動解析(米国カリフォルニア)
社外表彰
平成22年度地盤工学会地盤環境賞:地球シミュレータを用いた二酸化炭素地下貯留の大規模シミュレーションシステムの開発と実用化